心療内科・精神科

不眠症・睡眠障害

まずは正しい睡眠習慣と生活リズムを整えることが大切です

●不眠症・睡眠障害とは?


「眠れない」「ぐっすり眠れない」など様々な表現で睡眠に関する悩みを訴える方は多くいらっしゃいますが、成人の5人に1人が不眠に悩んでいるとの統計があることからすれば、不眠を訴える方が多くいらっしゃるのは当然とも言えます。
不眠症・睡眠障害とは、体力が回復せずにとても苦しかったり、日中の活動に障害をもたらしたりする状況が1ヶ月以上続いている場合をいいます。一晩か二晩眠れない夜があるからといって不眠症とは言わないのです。
一方で、「7時間以上眠れてないといけない」「眠るのに1時間以上かかっていないといけない」といった基準があるわけでもなく睡眠の質が悪いといってもそれを測れるものでもないので、客観的な基準はあいまいとも言えます。
やはり一番大切な基準は本人がつらいと感じて日常生活に支障が生じているかどうかになります。

●不眠症・睡眠障害の原因


不眠症・睡眠障害は、1.精神疾患などに伴うもの、2.身体疾患などに伴うもの、3.お薬の副作用、4.精神的ストレス、5.睡眠それ自体の異常、6.環境に分類できます

1.精神疾患などに伴うもの
不眠症・睡眠障害でもっとも多いのが、何かの病気が原因になっている時です。精神科の病気では、統合失調症、うつ病、不安障害の場合に眠れなかったり寝すぎたりします。

2.身体疾患などに伴うもの
身体に

痛み
しびれ
かゆみ
圧迫感
息苦しさ
尿意

などの身体的不快感がある場合は、ぐっすり眠ることを妨げたり、目が覚める原因となります。このような症状がある場合には不快感を取り除くことが適切な治療法になります。

3.お薬の副作用
お薬には、脳の覚醒レベルを上げてしまったり、睡眠の質を低下させるなど睡眠に影響を与える作用を持つものがあります。
例えば、

抗うつ剤
ステロイド剤
パーキンソン病治療薬
降圧剤
甲状腺治療薬
喘息の治療薬
アルコール
カフェイン

などが不眠の原因となる事があります。
副作用には個人差がありますので、これらの薬ですべての人に副作用が認められるわけではありません。

4.精神的ストレス
精神的ストレスを感じると不眠症になることはよく知られているところです。
ストレスというのは、不快と感じる刺激ですが、何を不快と感じるかには個人差があるため、精神的ストレスの原因にも個人差があります。
仕事や家族関係などに大きな悩みがあるとイライラしたり、不安になったり、また、大きな環境の変化にショックを受けたりすると眠れなくなります。この状態が続くと不眠症になります。

5.睡眠それ自体の異常、その他睡眠に関連する病気
睡眠それ自体の異常は、他の病気が認められず、睡眠以外に大きな行動異常や症状がないものをいいます。
強い眠気の発作を症状とする脳疾患であるナコレプシー、特発性過眠症などは睡眠障害専門クリニックの受診が必要です。睡眠時無呼吸症候群は、日中の過眠などの症状を伴う睡眠時に呼吸停止または低呼吸になる病気です。レビー小体型認知症の前段階で認められることの多いレム睡眠行動障害など睡眠時の異常行動を伴う病気もあります。
他に、原因不明のレストレスレッグ症候群、睡眠リズムが乱れて生じる睡眠相後退症候群などの病気もあります。

6.環境
温度、湿度、明るさ、騒音等、寝室の環境が整っていないと、ストレスが生じて睡眠の質が低下し、不眠になってしまう事もあります。

●不眠症・睡眠障害のタイプ・症状


「眠れない」の訴えには次の4つのタイプ・症状があり3つが組み合わさっている場合も多くあります。

1.ベッドに入っても寝付けない:入眠障害
ベッドに横になってから眠れるまでの時間には個人差がありますが、寝つきが悪くなったことによってトータルの睡眠時間が減少したり眠れないことが苦痛に感じる場合には不眠症の症状と言えるでしょう。
一般的な基準としては、健康な人はベッドに横になってから30分以内に眠りに入るとされており、日本睡眠学会では、入眠障害を「寝つくまでの時間が普段より2時間以上多くかかる状態」と規定しています。

2.夜中途中で目を覚ます:中途覚醒
中途覚醒とは、一旦は眠りに入れたのに途中で何度も目が覚めてしまうタイプの不眠症です。
夜中に1、2回目が覚めても健康な人ならまたすぐに眠れます。夜中に何度も目が覚めてもまた眠りに入れず、日中の眠気が生じるなど日常生活に支障が出る場合は不眠症といえます。

3.朝早く目覚めてそのあと眠れない:早朝覚醒
早朝覚醒とは、本来起きたい時間よりも早く目覚めてしまうのに再度眠りに入れない、というタイプの不眠です。
ひとつの基準として、自分が望んでいる起床時間よりも2時間以上早く目が覚めてしまい困っている状態が早朝覚醒といえるでしょう。

4.熟眠障害:眠った気がしない、眠りが浅い
熟眠障害とは、睡眠時間は十分にとって眠っているはずなのに、眠りが浅くて全然疲れが取れていない、眠った気がしない、と感じる状態です。
熟眠障害は睡眠の質が低下していることから生じる症状です。

●不眠症・睡眠障害の診断基準


ICD-10のよると
1.訴えは入眠困難か睡眠の維持の障害、あるいは熟眠感がないことである。
2.睡眠障害は少なくとも1ヵ月間、少なくとも週3回以上訴えられている。
3.夜も昼も不眠へのとらわれと、その影響についての過度の心配がある。
4.量的および/または質的に不十分な睡眠によって著しい苦悩が引き起こされるか、あるいは毎日の生活における通常の活動が妨げられている。

が診断基準とされています。

不眠症の症状が一定の期間続いて本人がつらく、日常生活に困難が生じている場合です。
注意しなければならないのは、3 の基準です。睡眠障害が続くと、「今日も眠れないのではないか」「眠れないと明日の仕事に響く」など不眠に対する恐怖と睡眠を妨害するような連想が出て、ますます眠れなくなるという悪循環が形成されてしまうことです。
客観的には短時間睡眠でも十分な睡眠を取れていると感じている人もいるように、睡眠には個人差があるのですから、「良い睡眠とはこうあるべきだ」と偏った認識を持たずに、睡眠に対する正しい知識と対処方法を見つけていくことが大切です。

●不眠症・睡眠障害の治療


ここでは主に見られる単純な不眠症について概説します。
不眠症・睡眠障害の治療は、
1.睡眠に関する正しい知識を持つ
体温やホルモン分泌などを調整している体内時計は、25時間周期で動いていて、これを概日リズム(サーカディアンリズム)といいます。地球の1日の周期は24時間で、概日リズムと24時間周期のズレを調整するのが日光です。日光を浴びることによって、暗くなると眠気をもたらすメラトニンというホルモンが分泌されて、体内時計がリセットされるのです。メラトニンの原料となるのがセロトニンというホルモンですが、日光はセロトニンの合成を活発にしますのでこの点でも日光を浴びることが大切なのです。
このように、日光を浴びないと、適切な時間にメラトニンが分泌されなくなってしまい、体内時計は毎日少しずつずれていきます。
昼間はセロトニン、夜間はメラトニンという2つのホルモン分泌の好循環が良い睡眠をもたらします。

2.生活リズムや生活習慣での自分の問題点を探して改善する
昼間はセロトニン、夜間はメラトニンという2つのホルモン分泌が乱れると不眠症になります。
私たち人間は、日の出とともに活動して、日没になったら休むというサイクルで生活してきましたが、現代は夜でも明るいし、テレビはほぼ24時間やっている、スマホの画面をいつまでも見ているなど、昼夜逆転の生活になりやすい傾向にあります。
起床時間を一定にして日光を浴びる、夜は光の刺激を避けて部屋を暗くしてなるべく早く寝る、など概日リズム(サーカディアンリズム)を乱さないことがまず何よりも大切になります。
生活習慣としては、就寝前のアルコール、タバコ、カフェインを控え、体温を適切に調整(就寝2時間前くらいに入浴して体温が低下する時間タイミングで眠りの入るようにする)などの生活習慣も整えるようにしましょう。
気の持ち方も大切です。
つらいのは理解できますが、「今日も寝付けなかったらどうしよう」「7時間は寝ないと疲れが取れない」「ちゃんと寝ないと明日の仕事に差し支える」などと考えだすとますます眠れなくなります。「今日眠れなくても明日は眠れるだろう」「1日くらい眠れなくても大丈夫」と、睡眠についてこうあるべきだと思い込まず、おおらかに捉えることはとても大切です。

3.正しい薬物療法をおこないます
睡眠に関する正しい知識を持地、生活リズムや生活習慣での自分の問題点を探して改善する努力をすることは前提ですが、不眠症が長く続くと疲労が回復せず、仕事や生活など日常生活に支障が生じてますますつらくなります。自分で可能な限りのことをしても不眠が続く場合にはクリニックを受診してお薬を検討するのが良いでしょう。
不眠症・睡眠障害のタイプでお話したように、不眠のタイプに合わせて睡眠薬を選んで処方します。また、不眠症の原因によっては睡眠薬ではない他のお薬が適している場合もありますので、個人個人に合わせた処方を選択していきます。









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  4. 不眠症・睡眠障害

    不眠症・睡眠障害

    不眠症・睡眠障害とは、体力が回復せずにとても苦しかったり、日中の活動に障害をもたらしたりする状況が1ヶ月以上続いている場合をいいます。一番大切な基準は本人がつらいと感じて日常生活に支障が生じているかどうかになります。

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